固定資産税評価額と売却価格、その差の真実|一物四価ではなく「5段階」で考える

不動産・実家賃貸

固定資産税通知書に感じた価格の違和感

毎年春、市役所から届く固定資産税の納税通知書。

自宅と賃貸中の実家、2物件分の通知書を手にしたとき、不動産サイトなどに記載されている近隣の売り出し価格との差があまりにも大きいことに気づきました。同じ土地なのに、なぜこれほど数字が違うのか。

調べていくうちに、土地の価格には「5段階」の顔があることがわかりました。そしてその中で、固定資産税評価額が最も低い数字であることにも明確な理由があります。


土地の価格には「5段階」ある

同じ土地でも、見る場所によって「値段」が変わります。一般的に「一物四価」と呼ばれますが、実際の売り出し価格まで含めると「五段階」と捉えた方が実態に近いと感じています。

価格の種類㎡単価の目安何のための価格か
①固定資産税評価額最も低い毎年の固定資産税・都市計画税の計算基準
②路線価(相続税評価額)①の約1.2倍相続税・贈与税の計算基準
③公示地価①の約1.4〜1.5倍国が毎年公表する土地の標準価格
④実勢価格(理論値)③の約1.1倍公示地価から算出する計算上の市場価格
⑤実際の売り出し価格①の約3〜4倍実際に市場で売買される価格

それぞれが異なる目的のために存在しており、どれが「正しい」ということではありません。ただし、資産価値を把握するうえで最も重要なのは⑤の実際の売り出し価格です。


実際の2物件で計算してみた

私が保有する2物件(福岡市東区)を例に、5段階の価格を実際に計算してみました。

自宅(土地面積190㎡)

価格の種類総額㎡単価
①固定資産税評価額約692万円約36,400円
②路線価(評価額×1.2倍)約830万円約43,700円
③公示地価の目安約969万円約51,000円
④実勢価格(理論値)約1,066万円約56,100円
⑤実際の売り出し価格約2,500〜2,850万円約131,000〜150,000円

※⑤は近隣の売り出し事例(同エリア・同規模)をもとにした目安

賃貸中の実家(土地面積272.6㎡)

価格の種類総額㎡単価
①固定資産税評価額約1,012万円約37,100円
②路線価(評価額×1.2倍)約1,214万円約44,500円
③公示地価の目安約1,390万円約51,000円
④実勢価格(理論値)約1,529万円約56,100円
⑤実際の売り出し価格約3,500〜4,000万円約131,000〜150,000円

通知書の評価額と実際の売り出し価格を比べると、約3〜4倍の差があります。


「計算上の実勢価格」と「市場の現実」の間にある溝

ここで一つ重要な点があります。

④の「実勢価格(理論値)」は「公示地価×1.1」という計算式から出てくる数字です。しかし実際にネットで近隣の売り出し物件を見ると、この理論値とはかけ離れた価格がついています。

価格の種類㎡単価
公示地価(2024年)約51,000円
実勢価格(理論値)約56,000円
実際の売り出し価格約131,000〜150,000円

理論値と実際の売り出し価格の間に、約2〜2.5倍の乖離があります。

なぜこれほど差が出るのか。公示地価は毎年1月1日時点の「標準的な価格」として算出されますが、実際の不動産市場では需要と供給、エリアの将来性、開発計画への期待感などが価格に折り込まれます。

今回の調査エリア(福岡市東区)は、同区内の再開発エリアの影響もあり、公示地価の上昇率が全国トップクラスの水準にあります。公示地価の更新スピードより、実際の市場の動きの方が速い状態です。

物流の世界における、ネット重量(Net Weight/正味重量)とグロス重量(Gross Weight/総重量)の乖離に似ています。ネット重量で計算してしまうと積載オーバーに気付けないことがあります。

注意が必要なのは、売り出し価格がそのまま成約価格になるわけではないという点です。実際の取引では値引き交渉が入ることもあり、売り出し価格はあくまで「上限の目安」として捉えるのが適切です。


固定資産税評価額は3年間変わらない

もう一点、重要な仕組みがあります。

固定資産税評価額は3年に1度しか見直されません(基準年度制度)。私の物件の場合、2024年が基準年度のため、次の見直しは2027年です。

この間、公示地価は毎年更新されます。直近のデータでは年率4〜5%程度の上昇が続いており、3年間で約12〜15%の上昇が見込まれます。

タイミング固定資産税評価額公示地価の目安乖離
2024年(基準年度)約36,400円/㎡約51,000円/㎡約1.4倍
2027年(次の見直し)見直し予定約57,000〜59,000円/㎡さらに拡大

これを「税負担が守られている」と捉えることもできます。評価額を実勢価格に合わせてしまうと、地価が上がるたびに固定資産税が急増して住み続けられなくなる人が出てきます。評価額を低く抑える仕組みは、生活を守るためのセーフティネットでもあります。

一方で、この「3年据え置き」という仕組みを知らないまま土地の売却に臨むと、思わぬ落とし穴にはまることがあります。


土地を売る前に知っておくべきこと

土地の売却を検討している方に特に知っておいてほしいことがあります。

地価が上昇している局面では、固定資産税評価額は常に「過去の価格」を示しています。不動産の買取業者の中には、売主に知識がない場合、評価額や評価額から計算した理論値をベースに査定額を提示するケースがあります。専門知識のない売主にとっては、その数字が適正かどうか判断が難しいのが実情です。

今回のケースで言えば、固定資産税評価額ベースで計算すると自宅の土地は約692万円(㎡単価36,400円)。しかし近隣では178㎡の土地が2,850万円(坪単価52.9万円)で実際に売り出されています。その差は約4倍。知っているか知らないかで、数千万円単位の差が生まれる可能性があります。

売却を検討する際に自分でできる確認は3つです。

国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で近隣の公示地価を確認する。SUUMOやアットホームなど不動産サイトで近隣の売り出し事例の坪単価を確認する。そして必ず複数の不動産業者に査定を依頼して比較する。

この3つを踏まえた上で交渉に臨むことで、不当に低い価格での売却を防ぐことができます。


通知書の数字との正しい付き合い方

通知書に書かれた評価額は「安い土地」を意味しているのではなく、「税負担が適正に管理されている」ことを示しているに過ぎません。

資産価値を把握したいなら、見るべき数字は別にあります。

5段階の価格の中で、日常的に把握しておくべきは③公示地価と⑤実際の売り出し価格の2つです。公示地価は国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で無料で確認でき、売り出し価格は不動産サイトで近隣事例を見るだけで把握できます。

自分の土地の価値を正確に把握したい場合は、不動産鑑定士や信頼できる不動産業者への査定依頼が確実です。

通知書の数字に一喜一憂するのではなく、5段階の価格の構造を理解した上で自分の資産の現在地を正確に把握しておくこと。それが不動産オーナーとして最低限持っておくべき知識だと思っています。


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