空き家を賃貸活用しようとした際、想定外の壁にぶつかることがあります。私の場合がまさにそうでした。相続した実家を賃貸化しようと動き始めたところ、いくつかの基準違反が発覚し、是正工事なしでは賃貸に出せない状況になりました。その経緯は「【実録】相続した空き家の活用1 戸建賃貸化を阻む違法建築判定」に詳しく書いています。
今回は是正工事の具体的な内容と、実際に支払った費用の全内訳を公開します。空き家再生や戸建賃貸を検討している方の参考になれば幸いです。
なお今回の工事費用は2019年当時の金額です。建設資材・人件費の上昇により、現在は同規模の工事でも費用が高くなる可能性があります。あくまで参考値としてご覧ください。
見落とされがちな「隠れた違反」
築古物件の違法建築として真っ先に思い浮かぶのは建物本体の構造問題ですが、見落とされがちなのがブロック塀と外壁材です。
特に注意が必要なのは、建物が建て直されていても敷地の境界まわりはそのまま使われているケースが多いという点です。新しい建物でも古いCBがそのまま残っていれば、違反状態は継続します。
私の物件で発覚した基準違反は以下の3点でした。
- CBの高さが制限超過
- 隣家との距離が近い部分の外壁が杉板(防火上の問題)
- 筋交い不足(構造耐力基準違反の可能性)
ブロック塀(CB)の高さ規制
CBの高さ規制は、大きな地震のたびに繰り返される倒壊被害を受けて段階的に強化されてきました。
- 1950年:建築基準法施行。CBの規定なし
- 1968年:十勝沖地震でCB倒壊多数発生
- 1971年:補強CB塀の規定新設(高さ3m以下)
- 1978年:宮城県沖地震でCB倒壊により10名以上死亡
- 1981年:現行基準に強化
現行基準では、控え壁なしの場合は1.2m以下(ブロック約6段)、控え壁ありの場合でも2.2m以下(同約11段)です。この基準は1981年から変わっていません。

近所を散歩してみると、控え壁なしで7段以上積まれた基準違反の可能性があるCBを100mほどの範囲で4軒ほど見かけました。築年数の古い住宅地では珍しくない光景です。CBは建設業の許可なしに施工できるため、知識のない施主が自分で積んだケースも多く、違反状態のまま放置されている物件が全国に多数存在しています。
危険なCBの撤去には補助金が活用できる場合があります。福岡市では「ブロック塀等除却費補助事業」として、道路に面する危険なCBの撤去費用の一部を助成しています。助成額は撤去費用の2分の1と撤去延長(m)×5,000円のいずれか低い額で、上限15万円です。工事着工前の申請が必要です。この情報は更新されている可能性があります。参考までに福岡市のブロック塀等除却費補助事業ページをご確認ください。福岡市以外にも同様の補助制度を設けている自治体が多くありますので、まずはお住まいの自治体窓口に確認することをお勧めします。
外壁材の防火規制
外壁材の規制は、地域の用途指定によって異なります。準防火地域や法22条区域では、隣地境界線から1階で3m以内・2階以上で5m以内の「延焼のおそれのある部分」に、杉板などの木材をそのまま使用することはできません。
私の物件は隣家との距離が近く、この「延焼のおそれのある部分」に該当する外壁が杉板だったため、防火性能のあるサイディングへの張り替えが必要となりました。

隣家との距離が広くとられた地域では、この規制の適用外となる場合があります。空き家を取得する前に、対象物件が準防火地域や法22条区域に該当するかどうかを自治体の都市計画図で確認しておくことをお勧めします。
実際の是正工事内容と費用内訳
今回の是正工事の総額は270万円(税込・2019年当時)でした。
カテゴリ別内訳(2019年当時)
| カテゴリ | 主な工事内容 | 金額 |
| 仮設工事 | 足場・養生・廃材処理など | 223,000円 |
| 解体撤去工事 | 杉板撤去・CB撤去・壁撤去 | 310,000円 |
| 木工事 | 構造補強・サッシ・大工手間(工賃) | 445,000円 |
| 左官・タイル工事 | CB笠木補修・和室壁補修 | 98,000円 |
| サイディング工事 | 外壁張替え一式 | 1,110,865円 |
| 電気・空調・給湯 | メーター・室外機・給湯機脱着 | 110,000円 |
| 現場諸経費・値引・税 | – | 403,135円 |
| 合計 | – | 2,700,000円 |
費用の41%をサイディング工事が占めています。外壁の是正が今回の工事のメインであったことが数字にも表れています。
主要な工事の個別費用
- 外装杉板撤去工事(95.2平方メートル):220,000円
- CB撤去(16.4m、ダイヤモンドカッター使用):60,000円
- サイディング貼り(ニチハマイスターウッド調・99.9平方メートル):699,300円
- 通気胴縁・除湿シート・コーキング一式:271,500円
- 構造補強(筋交い・構造用ベニヤ・間柱等):207,000円
- 足場損料:60,000円
- 発生材処理費(産廃含む):65,000円
範囲が広く工数も多くなる外壁は、費用が高額になることが特徴です。
管理会社ネットワークで費用を抑えた話
この270万円という金額は、当時としてもかなり抑えられた費用だと思います。費用を抑えられた理由は、地元の不動産管理会社経由の業者ネットワークによるボリュームディスカウントが効いたためです。
管理会社は複数の物件を継続的に発注しているため、業者側も優先的に対応してくれます。自分で業者を探して個別に見積もりを取るより、信頼できる管理会社のネットワークを活用する方が、コストと品質の両面でメリットが大きいケースがあります。

一般的に改修・是正工事の費用は業者によって大きく異なります。複数の業者から見積もりを取ることが基本ですが、築古物件の場合は工事中に追加の問題が発覚するケースもあります。管理会社や信頼できる専門家を事前に見つけておくことが、想定外のコスト増を防ぐ最善策だと考えています。
空き家再生を検討している方へ
築古の空き家再生では、建物本体の状態だけでなく、CBや外壁材といった見落とされがちな部分の確認が重要です。特に以下の点は事前にチェックしておくことをお勧めします。
- CBの高さと控え壁の有無(1981年以前に設置されたCBは要注意)
- 外壁材の種類と隣地境界線からの距離
- 物件が準防火地域・法22条区域に該当するか
- 筋交いなど構造耐力上の基準を満たしているか
空き家活用に関する支援制度については、国土交通省「空き家再生等推進事業について」でも情報を確認できます。
是正工事は想定外のコストになりがちですが、適切な資金調達と業者選定ができれば、空き家を稼働資産へ転換することは十分に実現可能です。
本記事が、空き家再生や不動産投資による戸建て賃貸を検討されている方々の参考となれば幸いです。


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